高齢化と過疎化が進む三重県熊野市神川町。
そこに休校となった木造校舎がある(旧神上中学校)。
この趣のある平屋の校舎と校庭で毎年行われる「桜まつり」。
この「熊野神川桜まつり2015」に合わせ、本年は京都・大阪・東京から人が集い、様々な関わりを持つことになった。
その中で、我々は校舎の教室を用いた『田本研造展』の展示会場の企画・デザインを行った。
田本は、この神川出身の明治の写真技師で、
北海道に渡り開拓の様子を撮影し続けたドキュメンタリーの祖として評される人物である。
本展は田本の功績を紹介するとともに、
写真をキーワードとしてカメラ・オブスキュラや地元産の那智黒石の体験展示を行い、
田本を知らない人でも楽しめるものとなっている。
また、今後の教室の改装のヴィジョンを示した模型をつくり、
将来の校舎の活用方法を提案し、そしてこれからの神川の未来を考えていくための展覧会となっている。
本展の空間構成は、安価な材料と簡便な施工方法を模索し、セルフビルドで行った。
異なる質感や情報を持つ複数の細長い紙を、平面的に粗密や傾きをつけながら配置し、天井から吊り下げている。
紙の重なりは空間を緩やかに仕切り、奥行きをつくる。
その紙を背景に展示物が並び、同時に鑑賞者を次の展示へと導く動線が形成されている。
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